我々世代なら誰もが知ってるサイコな事件の加害者が書いたとされるこの本。被害者の許可を得ることなく出版されたとのことで当時は全く興味がなかったが、昨年仕事で事件現場である中学校前を数回通ったことで、加害者がどんな家庭で育ち何が彼を駆り立てたのかという興味から読むことに。 最初に言っておくが、これは賛否両論ある本だとは思う。自分自身は残念ながら否の感情が強い本となっている。 文章はとても読みやすく当時の状況がよく伝わってくる。しかしその反面、著者の感情が全く伝わってこず、回顧録の羅列が淡々と進んでいるように感じてしまう。その理由の一つは、自分の知りたかった加害者の当時の感情や家庭環境があまりにも普通だったからかもしれない。意図的にそのように表現しているのかもしれないが、痒いところに届いていない感じがある。 最も残念だったのは反省や後悔が全く感じられない面である。事件後に加害者が生きていく大変さは細かく描写されてるが、この事件を起こしたことによる自責の念や気持ちの変化などには殆ど触れていない。「一体、この本は何のために書かれたのだろうか？」そう感じずにはいられない。 もしかしたら、読み手である自分が「こうあって欲しい」という思いを持って読んでたのに、内容的に裏切られたという思いがあるのかもしれない。 ただ最後に伝えるとすれば、この本は駄作ではないということ。加害者、被害者、未成年犯罪、法律、社会、制度、、色々なことを考えされられる本であることは間違いない。